大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)820号 判決

上告人

株式会社セントラル工芸製作所

右代表者

井村伸吾

右訴訟代理人

豊蔵利忠

右訴訟復代理人

赤松進

被上告人

株式会社日証

右代表者

高室修

右訴訟代理人

武並覚郎

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人豊蔵利忠の上告理由第一点について。

原判決は、被控訴人(被上告人)が外観上手形の受取人である宮崎金庫店宮崎弘から樋口俊太郎へ、右樋口から被控訴人へ順次連続した裏書の記載がある本件手形を所持している事実を認定し、右確定事実により被控訴人を本件手形の適法な所持人と推定する旨判示したものであること判文上明らかである。手形法一六条一項(同法七七条一項一号により約束手形に準用)は、裏書の連続ある手形の所持人は適法の所持人と推定する旨を規定するところ、当該手形に連続した裏書の記載があるか否かの事実は、同条項を適用するための要件事実であつて、口頭弁論においてその旨の主張を要するものであることは所論のとおりである。しかしながら、被上告人は、第一審口頭弁論において陳述した訴状に代る準備書面において、原判決の右認定通りの経過で本件手形の振出および裏書がなされた旨を記載し、原判決認定通りの裏書記載のある本件手形を証拠として提出しており、その他、第一審および第二審における本件口頭弁論の全経過を総合すると、被上告人は、第一審口頭弁論において原判決の右認定事実を主張する趣旨であり、右主張を原審口頭弁論においてもなお維持しているものであつて、ただ、本件手形の実質的権利移転の経過につき、原審において所論の指摘するような内容の主張をしたものと認められるから、原判決に当事者の主張のない事実を認定した違法がない。そして、原判決の前記認定事実により被上告人を本件手形の適法の所持人と判断しうるものであるから、被上告人の本訴請求を肯定した原判決に所論の違法が認められない。論旨は採用できない。

同第二点について。

本件記録によると、上告人が原審において、上告人のなした本件手形の振出行為が錯誤により無効である旨の抗弁を主張したものとは認められないから、所論はその前提を欠く。原判決に所論の違法がなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例